DESIGNER
野口 尚彦
1968年、東京生まれ。
貿易商であった父親の影響により、香港やシンガポール、アメリカ等の外国に幼少の頃より訪れ、異国文化に多く触れる。
また、父親が持ち帰ったアンティークや母親の趣味であった古伊万里等の数々の工芸品や調度品に興味を持つようになる。
外国の整然とした街並み、調度品の繊細な作りこみ、金属・陶器やテキスタイル、繊維などの様々な素材の質感に、モノづくりにおける細かな美的感覚を幼少のころより養う。
日本における日常の暮らしと、異国の体験や品々から感じる違いや差分に、独特バランス感、様々な調和の形、陰と陽の対比など、様々な全体観や対極観を見出すようになる。
幼いころは、特にファッションに興味を持ち、服飾の学校を卒業後イタリアへ留学。
20代の頃に、友人からジュエリー制作用道具を譲り受けたことをきっかけに、ジュエリー創作を独学で始め、キャリアを転向。
1992年に開始したキャリアはすぐに多忙を極めたが、1999年にパリに拠点を移したことで、売れるもの/流行りものを創作するのではなく、自身が素敵だと思うものの創作に没入したいという想いやデザインに対する考え方を深めた。
そして、ファッションとしての統合的な美への視点と、独創的に編み出したジュエリー制作技術をベースに2004年にnoguchi Bijouxをスタートした。
フランス語でジュエリーを表すBijouxは、フランス在住時代に確立した価値観に敬意を表している。
幼少のころから培った価値観と欧州で学んだ感性、ジュエリーにファッションとして肌や服との調和の感覚をベースに、東京の工房で作られる独創的、そして繊細な作りに対して、すぐさま欧州の高級百貨店や名高いハイジュエリー専門店が反応し、取り扱いがグローバルで開始された。
ジュエリーは他人に対する表現や虚栄心ではなく、その人にとって本当に似合う、想いを込められる存在となってほしいという観点から創作アプローチをし、「こうあるべき」という常識にとらわれない自由な発想から、様々な作品を世に送り出している。
ブランド開始当初は、隙間なく埋め尽くす欧州の美の影響が多く見られたが、円熟期に入った現在では、研ぎ澄まされた日本の美の在り様を見つめ直し、西洋発のジュエリー・アクセサリーにおける日本的解釈、再構成に取り組んでいる。